植物のツタや花が伸びながら成長するアニメーションです。本来VideoStuidoでは無茶な効果ですが、ペインティングクリエーターというお絵かきを動画化する機能を応用して専用のビデオマスクを作ると、なんとかそれっぽい表現になります。手数が多く難易度が高いため紹介を少しためらいましたが、上手く使いこなすとリッチな映像表現になります。
制作手順を文章で示すと以下の通りです。
【1】透過PNGの本番画像「A」と「A」の白黒画像である「B」を用意する。
【2】ペインティングクリエーターを起動して、画像「B」を元に白黒アニメ「C」を作る。
【3】アニメ「C」と画像「B」を組み合わせて、ビデオマスク「D」を作る。
【4】本番画像「A」にビデオマスク「D」を適用する。
仕上げとなる【4】の作業前に、中間ファイルを2つ作る必要があります。
まずは画像を準備します。IllustratorやPhotoshopで背景が透過PNGの1920x1080pix画像を用意します。また、同じサイズで背景黒、イラスト部分は白色にしたマスク用画像(グレースケール)を用意します。
ツール→ペインティングクリエーターを起動します。
最初に用意した白黒画像を読み込みます。
ここでの目的は、黒色の筆で、この白い背景を端から塗りつぶす工程をアニメとして録画することです。後で作成したアニメを逆再生すれば、白い植物が伸びるようなアニメになります。
ツールの項目にある虫眼鏡のボタンで作業領域を拡大できます。赤枠で囲っているのは記録開始ボタンです。
記録開始前に筆の形状を調整します。筆者は縦・横の幅を最小にして、縦横、もしくは斜めの線状の筆で作業しています。ペンの種類は一番左の筆で、歯車マークをクリックして詳細が設定できます。
歯車のマークをクリックして詳細を表示しました。透明度:ゼロ、ソフトエッジ:ほぼゼロ、エッジ角度:任意 に設定します。エッジ角度を変えると斜め方向の筆が作れるので、マスク作業時に便利です。ソフトエッジは好みでぼやかしてもかまいませんが、一筆書きで真っ黒に描ける濃さに設定します。
記録開始ボタンを押してストロークを記録します。書き間違えた場合は ctrl+z で一手前に戻れます。
植物の端から中央に向けて、順序立てて黒く塗りつぶしていきます。筆が遊んでストロークがうろうろすると、その様子も記録されるので、一筆書きのように要領良く塗りつぶしていきます。
全て黒く塗りつぶしたら記録停止を押します。右側のファイル一覧にサムネイルが生成されます。
生成したファイルを右クリックして、長さを変更。
アニメーションの長さは最長の15秒に設定します。生成したアニメが長時間であるほど、ストロークの描画が繊細だからです。長尺で生成したアニメを縮尺してもフレーム数は一定ですが、短尺を長尺に引き伸ばすとフレーム数が減ってしまいます。
右下のOKボタンを押してアニメーションを出力します。PCの性能とストローク数により時間が変わります。
終了すると自動的に編集画面に戻ります。右上のメディアウインドウに、生成したアニメーションがありますので、トラックにドラッグ&ドロップします。尚、アニメーションファイル単体を保管したい時は、アイコンを右クリックしてファイルの場所をエクスプローラーで開きます。
マスク用の白黒画像をアニメの奥側(トラックの上)に配置して、アニメとサイズを合わせます。
アニメの長さを変える時は、クリップの右端をShiftキーを押しながらドラッグします。Shiftキーを押しすとハンドルが白色になるのを確認します。
マスク画像とアニメのサイズ・尺を合わせた状態です。現時点ではアニメの筆跡が白い筋のゴミとして残っています。また、アニメの再生順も逆になっていて、これでは植物が伸びているように見えません。
アニメのクリップを選択→オプション→編集→ビデオの逆再生にチェックを入れます。
プレビュー再生すると、植物が伸びているような体裁になりました。
次は筆跡跡のゴミを除去します。アニメのクリップを選択→オプション→編集→色補正を開きます。
輝度・コントラスト・ガンマを-100に変更します。
これで筆跡の白い筋が消えました。
白黒のビデオマスクを出力します。この例では1920×1080,30p,MP4(H.264)設定です。このビデオマスクを本番画像に適用すると、植物が伸びるような効果になります。
本番画像をトラックに配置して選択→オプション→属性→マスク&クロマキー
→オーバーレイオプション→ビデオマスク
マスク一覧のウインドウの右下にある「+」をクリックして、先程作成したビデオマスクを読み込みます。
できました。この動画は背景透過なので、他の素材と組み合わせできます。モーションを生成して拡大率を上げれば、デモ動画のように擬似的なカメラワークも作れます。(拡大前提の場合は最初から4K解像度で作るとよいでしょう)
おまけです。トラックを奥側(トラックの上)に複製して、FXビデオ調整の明度を下げて黒色に変換、FXのスムージングでボケ味を追加すると「影」が作れます。ビデオマスクの設定は同一なので、影付きのアニメーションになって見やすくなります。
この効果はペインティングクリエーターで丁寧にアニメを作るのがポイントです。スマートな筆跡(ストローク)になるよう、予め検討して作業すると良いでしょう。また、植物だけでなく、飾り罫やロゴマーク、文字列等にも応用できます。