デジタルサイネージで映画を上映できますか? 

デジタルサイネージで映画を上映できますか?

自社のデジタルサイネージに気の利いた映画でも流せば、客寄せに使えるかも……と考えたことはありませんか。結論を言うと、著作権の切れた映画であれば自社のデジタルサイネージで上映可能です。
但し、訴訟されないという保証はありません。取り扱いはあくまでも自己責任となります。当記事では著作権切れの映画についていくつか紹介しますが、法的な安全性を担保するものではありません。ご注意ください。
 
ローマの休日

ローマの休日はパブリックドメイン映画としても有名です。


■著作権の切れた映画は環境ビデオ的に上映できる

著作権の保護が切れた著作物をパブリックドメイン(共有財産・公有)と言います。古い映画が500円程度で販売されているのを見かけますが、それらがパブリックドメイン化された映画です。
映画の著作権は公表から70年間保護されます。但し、特定の人物の著作物と言える映画の場合は、その著作者の死後から50年保護されます。
パブリックドメインの動画は、CM扱いではなく環境ビデオの様にコンテンツを独立させて上映するのが無難です。CMに組み込むと後述の商標権や著作者人格権と衝突する可能性があり、ちょっと怖いですね。
 


■「ローマの休日」はパブリックドメイン

オードリー・ヘップバーン

映画の著作権切れについては「1953年問題」と呼ばれwikipediaで詳しく解説されています。1953年(昭和28年)に公表された団体名義の映画が、2003年時点で保護期間が終了しているか、それとも2023年まで存続しているかという、見解の対立についてです。
結論、最高裁が2003年末をもって保護期間終了と判決し、「ローマの休日」「シェーン」はパブリックドメインとなりました。
 
1953年問題
https://ja.wikipedia.org/wiki/1953%E5%B9%B4%E5%95%8F%E9%A1%8C
 

■チャップリン映画の訴訟と顛末

チャップリン

さて、個人の著作物であると判断される映画は、本人の死後50年ルールが適用されるため、安易に使うと火傷するかもしれません。
2006年、パブリックドメインコンテンツ販売の一環として、チャップリンの映画を複製販売していた業者が、チャップリンの親族(会社)から訴えられた事件があります。この時は結果的に業者側が敗訴し、販売停止と賠償金の支払いを命じられました。
平成19年8月29日の東京地裁判決では、チャップリンの映画の著作権を下記の通り認定しています。
 
「サニーサイド」  1919年公開 2015年12月31日まで保護
「偽牧師」     1923年公開 2015年12月31日まで保護
「巴里の女性」   1923年公開 2015年12月31日まで保護
「黄金狂時代」   1923年公開 2015年12月31日まで保護
「街の灯」     1931年公開 2015年12月31日まで保護
「モダン・タイムス」1936年公開 2015年12月31日まで保護
「独裁者」     1940年公開 2015年12月31日まで保護
「殺人狂時代」   1947年公開 2017年12月31日まで保護
「ライムライト」  1952年公開 2022年12月31日まで保護
 
当時のニュース
http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200607210557.html
 
判決文はこちら
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/065/035065_hanrei.pdf
 
チャップリン映画の著作権保護期間については、最高裁まで上告が続き、判断が確定しました。
 
最高裁判例(上告の棄却)平成21年(2009年)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/058/038058_hanrei.pdf
 
裁判を受けて一旦販売停止になったチャップリンの映画ですが、2016年6月現在、一部のコンテンツが500円映画として販売再開されています。(映画の版権を持っている企業としては面白くないでしょうが)
 
amazonでのチャップリン映画販売の様子

2016年6月現在のAmazonの様子。販売年が「2016年」になっているのがポイントですね。


 

■コンテンツは勝手に改変してはいけない

映画を改変して自社の商品をアピールさせる行為は、著作者(著作権を引き継いだ企業を含む)からの許可がない限り認められません。ローマの休日のオードリーヘップバーンに商品をPRして貰えればさぞ販売が捗るでしょうが、そうはいきません。
著作物の改変については、著作権切れとは別に保護されています。第三者による勝手な改変が横行すれば、平和の象徴として生まれたキャラクターが戦争のプロパガンダに使われるかもしれませんし、本来善良なキャラクターが人殺しとして扱われるかもしれません。著作者と作品の尊厳を無責任な改変から守るルールを著作者人格権と言います。
 


■商標に著作権切れは無い

企業や商品を示す名称やマークを商標といいます。商標は更新する限り権利が続き、特に有名な商標のパブリックドメイン化はほぼありません。
例えば、チャップリンのシルエットや名称等は商標登録されており、これをうっかり商売で使うと酷いことになるかもしれません。
ですから、パブリックドメイン入りした映画であっても、ひとつの独立したコンテンツとして上映する必要があります。
 


■わいせつ表現に注意

デジタルサイネージで著作権切れの映画を上映する場合、映画の内容がわいせつ物にあたらないか注意が必要です。
 
刑法175条 わいせつ物頒布等の罪の条文には、「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。」とあります。デジタルサイネージでの表示は陳列にあたります。常識的に考えて、エロ動画を大画面で路上に公開すれば、おまわりさんに怒られますよね。
<法律>
刑法175条 わいせつ物頒布等の罪
 
<条例>
東京都青少年の健全な育成に関する条例
歓楽的雰囲気を過度に助長する風俗案内の防止に関する条例(東京都)
青少年保護育成条例
 


■TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の発行により条件は変わるかも…

当記事で紹介した内容は、2016年現在の日本国内の法律に基づきます。
今後TPPが発行した場合、著作権保護の環境は大きく変わる可能性があります。

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